高麗人参とニンジン

******(画像説明)

三角形でオレンジ色をした根菜「ニンジン」。
生薬として有名な高麗人参も「人参」と読みます。

同じ「ニンジン」と呼ぶ植物なのに、片方は高価な漢方薬で、もう片方は日本全国で消費される代表的な野菜です。
そのルーツは同じなのでしょうか? それとも、全く違うのでしょうか? 違うとしたら、なぜ同じ呼び名なのでしょうか? 今回は、そんな「ニンジン」について、皆さんにご紹介させて頂きます。

そもそも「ニンジン」とは

そもそも、歴史上で最初に「ニンジン」と呼ばれたのは「高麗人参」です。
中国で発見された高麗人参は、その姿が人の下半身似ている事から「人参」と呼ばれたのです。
ここで注意するべきは「人参」であって「高麗人参」では無い事です。
では、高麗人参とは誰が何処で呼び始めたのでしょうか? 実は、高麗人参とは日本人の人参取扱業者が区別の為に付けた名前なのです。

「人参」と「高麗人参」

なぜ薬草として珍重された「人参」が「高麗人参」と呼ばれるようになったのか。
それは、日本産の人参と、朝鮮半島産の人参を区別しようとする動きから始まります。
国産の人参と朝鮮半島産の人参を区別し、朝鮮半島産の物を「朝鮮人参」と呼ぶようにしたのです。
日本と朝鮮半島では、似ているとはいえその気候は異なります。
当時、日本の高麗人参よりも、朝鮮半島の高麗人参の品質が高かった事もあり、消費者に対してきちんと原産国を分けて伝える必要が生まれたためです。
その後、戦前から戦時中まで、日本の人参取扱業者は、輸入物の人参を「朝鮮人参」と呼んでいたのですが、戦後になると輸入元の韓国の業者に配慮し、"朝鮮"という単語を使わず、「薬用人参」と呼ぶようにしました。
「朝鮮」という言葉を使うと、韓国産であるにもかかわらず、北朝鮮産のイメージが強くなるからです。
しかし、その「薬用人参」という名称が薬事法に抵触すると行政指導を受けたため、そこから名称を「高麗人参」と呼ぶようになりました。
こうして、最終的に「人参」から始まった呼び名は「高麗人参」と呼ばれるようになりました。

「人参」とオレンジ色のニンジン

私たちが普段目にする、尖った三角形でオレンジ色の野菜も人参(ニンジン)と呼びます。
オレンジ色の人参は、セリ科の根菜“胡蘿蔔”として、江戸時代に日本に伝わってきた野菜です。
高麗人参はセリ科の植物ではありません。
ですので、薬草として珍重されていた人参とは、そもそも全く別の物です。

胡蘿蔔も有名な「人参」と同じように根の部分を食することから、江戸時代の人々はそれを「セリニンジン」と呼び始めます。
薬草として貴重な人参と違い、セリニンジンは広く日本の食卓に並ぶほど一般化する事となり、西洋医学の発達による人参消費量の減少もあって、いつしかセリニンジンを「ニンジン」と呼ぶようになりました。

本来は、薬草として活用されている物が「人参」ではあるのですが、こういった時代背景により、全く別の胡蘿蔔が人参と呼ばれるようになったのです。
もし、江戸時代に薬草としての人参が浸透していなければ、胡蘿蔔は全く別の名前になっていたかもしれませんね。

様々な時代の流れで呼び方が変わるほど、長期間に渡って愛される高麗人参。
その高麗人参に似ているからという理由で名づけられてしまったオレンジのニンジン。
名前の推移から、当時の人たちのネーミング感覚を垣間見たような気がします。
(参考)高麗人参に関する詳細を分析http://situartgallery.com/syousaiwobunnseki.html
普通の人参との違いhttp://fightislands.info/af.html